口コミメディアの「プレミアム会員」による売上比率はなんとたったの20%以下。比率を高める方法はあるのか?
食べログvsアットコスメ!売上・利益・PV比較
飲食店の口コミサイトといえば「食べログ」を思い浮かべ、化粧品の口コミサイトといえば「アットコスメ」を思い浮かべる人は多いだろう。今回は、両者のメディアの性質の差を浮き彫りにするべく、食べログとアットコスメの売上・利益率に関してまとめた。
まずは、食べログを運営するカカクコム社、アットコスメを運営するアイスタイル社のIR資料から売上・利益を参照し、similarwebを用いて年間PV数を推定した。
【食べログ(FY2016)】
売上:186.0億円
営業利益:87.2億円
営業利益率:46.9% (カカクコム全体の営業利益率)
年間PV推定値:51.2億PV
1PVあたりの売上:3.63円
【アットコスメ(FY2016 4Q - FY2017 3Q)】
売上:66.3億円
営業利益:25.3億円
営業利益率:38.2%
年間PV推定値:18.4億PV
1PVあたりの売上:3.60円
なんと、売上・営業利益・営業利益率・年間PV推定値・1PVあたりの売上、といった全ての指標で、食べログがアットコスメよりも高い値を示していた。飲食店の紹介サイト・口コミサイトは、「Hot Pepper」「ぐるなび」「Retty」「Yahoo!ロコ」「Google Place」など、様々な媒体が乱立している中、これだけの売上を計上できているのは食べログの口コミの数と質が信頼されている証だと言えよう。
食べログとアットコスメの売上チャネル徹底比較
次に、IR資料には各媒体のセグメント別の売上分布が記されていたので、これを比較する。「有料会員(BtoC)」「有料会員(BtoB)」「広告・EC購買(EC購買はアットコスメのみ)」の3つに切り分けられて記載されていた。
「有料会員(BtoC)」とは、個人ユーザーの「プレミアム会員」制度を指し、「有料会員(BtoB)」とは、飲食店や化粧品ブランドの紹介ページを掲載する制度を指し、「広告・EC購買(EC購買は@コスメのみ)」とは、トップページのジャック広告や、EC購買への導線を指す。以上の売上比率は以下の通りである。
ここから、売上のセグメント比は大きく異なっており、食べログの売上の主軸は、BtoB有料会員、アットコスメの売上の主軸は広告・EC購買であることが判明した。
食べログの売上の主軸であるBtoB有料会員とは、各飲食店の紹介ページをリッチにするための制度である。例えば、「店舗トップ」欄に大きな写真を掲載でき、店舗の訴求力を高めることができる。
▲有料課金登録した飲食店の例
一方、アットコスメの売上の主軸である「広告」とは、トップページのジャック広告などを指し、製品の広告を大きくサイト上に掲載する制度である。
▲ジャック広告の例(アットコスメのトップページ)
このように、食べログ、アットコスメで売上の中心となるモデルは大きく異なっていたが、両者ともに「プレミアム会員」制度による売上が小さいことは共通していた。
口コミメディアの「プレミアム会員」による売上比率はなんとたったの20%以下。比率を高める方法はあるのか?
以上のセグメント別売上から、食べログは売上全体の19%、アットコスメは売上全体の11%がBtoC課金、すなわちプレミアム会員による売上であることが判明した。全体の売上額からすると、非常に小さい額しか売り上げられていないと言わざるを得ない果たして、プレミアム会員による売上比率をもっと高めることはできないだろうか?
さて、有料会員の売上は以下のようにブレイクダウンできる。
「売上 = ユーザー数 × 利用料金」
ここで、売上と利用料は公開されているので、その値から各媒体の有料会員数の平均を計算してみよう。結果は以下の通りである。
【食べログ】
売上額(年):35.2億円
有料会員費(年):3,600円(税別、300円×12ヶ月)
有料会員数:97.8万人
【アットコスメ】
売上額(年):6.5億円
有料会員費(年):3,360円(税別、280円×12ヶ月)
有料会員数:19.3万人
以上より、食べログは平均的に97.8万人もの有料会員登録がされている。これだけの人数が有料会員登録しても売上規模は全体の20%未満に留まっており、あまり旨味のあるビジネスモデルとは言えないだろう。ここから、顧客基盤を維持しつつ、有料会員の会員費を上げることはできないのだろうか?
例えば、Yahoo!プレミアムの会員費が2016年3月に82円値上げし、380円(税抜き)から462円(税抜き)となったことは記憶に新しい。*2 プレミアム会員の付加価値が向上すれば、月額300円から450円程度まで払える余裕があるとも言える。
具体的には、食べログは「優先予約機能」など、アットコスメは「化粧品の試供品の提供」などのサービスがあれば、プレミアム会員の訴求力は大きく向上すると思われる。これらのプレミアム会員制度には、値上げするポテンシャルがまだまだ存在し、プレミアム会員の売上比率を高めることができるかもしれない。