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SHIBUYAでIPOを目指すCEOのBLOG

上場企業の財務分析を行います。

SaaS「カイポケ」の月額利用料を6.7倍に引き上げ、売上を急成長させた「2つ」の戦略。

f:id:tarisaa:20170508175431p:plainカイポケとは?

 カイポケとは、看護・介護領域に人材メディアを展開するエス・エム・エス社が提供する新規事業であり、介護事業社向けの「経営支援サービス」である。

 エス・エム・エス社の主力事業は看護・介護領域特化の人材メディアだが、「カイポケ」を人材メディアに次ぐ「第二の矢」として注力し始め、下記のように「カイポケ」の売上もぐんぐん伸びている。

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 カイポケで最も特筆すべきは、同社がとった価格戦略である。2014年2月以前は月額3,000円でサービスが提供されていたが、一気に(平均単価)20,000円に上げる戦略をとった。

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 この月額使用料6.7倍もの大幅値上げによって、一時期ユーザーの離反を招いたが、現在は既に値上げ前の水準までクライアント数が増加した。結果、下記のように売上が急成長することになったのである。

f:id:tarisaa:20170511233428j:plain*1

 今回は、その価格の値上げに至ったエス・エム・エスの「2つ」の戦略を考察する。

カイポケの売上と利益は?

エス・エム・エス社のIR資料を参照すると、以下のように記載されている。

エス・エム・エス(2017年3月期)

売上高:230.5億円

(「カイポケ」売上高:27.8億円)

純利益:28.0億円

純利益率:12.1%

 以上のように、カイポケの売上高は27.8億円と記載されているが、セグメント別の利益額は記載されていない。「カイポケ」の純利益を推定すると、エス・エム・エス社全体の2017円3月期の純利益率が12.1%なので、27.8億円×12.1%=約3.26億円の純利益と推定できる。こうした「カイポケ」の成長戦略で特筆すべきを「戦略1」と「戦略2」に分けて紹介する。

【戦略1】初期は「コア業務」を格安(月額3,000円)で提供して、ユーザー数爆増の戦略

 カイポケが当初提供していたサービスは「保険請求」であった。介護事業者における「保険請求」の詳しい手順は以下のブログに譲るが、かなり面倒くさい国とのやり取りが必要なのである。

kaigo-shienn.hatenablog.com

 こうした手続きを月額3,000円でASP提供するのは、競合他社のサービスと比較しても分かりやすく安い。「保険請求」というかなり面倒くさい手順の代行に絞って機能を提供することに分かりやすい価値があり、以下のように数年で一気にシェアを拡大したと言えよう。

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【戦略2】13%のシェアを獲得した時点で月額運用費をぐんと引き上げ、ARPU爆増の戦略

 ここで、カイポケの月額運用費を上げた時期を、何故「2014年2月」に決断したのだろうか?2013年3月期のエス・エム・エス社の決算資料を参照すると、下記のように記載されていた。

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 値上げを決断した時期のカイポケのシェア率は13%であった。 この数値は決して高いものではないが、周辺サービスの「カイゴジョブ」では50%ケアマネドットコムは40%のユーザーを囲い込んでおり、様々なセグメントを合計すると、半数以上の介護業界のお客様がクライアントとなっていた。(実際、値上げを行なったカイポケにはカイゴジョブやケアマネドットコムとの連携機能があり、利便性を向上させている。

 以上のように他サービスで十分ユーザーに認知され、サービスを使用されている状態であれば、価格を向上しても顧客の離反はあまり起こらないのかもしれない。

まとめ 

 「深い課題感に特化してSaaSを安価で提供してユーザー数を増やし」、その後に「価格を上げて一気に収益化する」戦略は、他のSaaS業者や顧客向けサービスにも応用できるかもしれない。 

 勿論、やりすぎると顧客の反感を買うと思われるので、価格や時期は精査する必要はあるが、例えばリクルートの「Airレジ」とかでも同様の戦略は取れるのでは無いだろうか?