株式会社ユーザーローカルの有価証券報告書を分析してみた
はじめに
2017年3月30日(木)に新規上場した(株)ユーザーローカルの有価証券報告書を分析した。公募2,940円に対して初値12,500円と初値騰落率439%となり、今話題のビッグデータ解析・人工知能銘柄とあって、かなり市場から注目されていたことが伺える。
私自身、学部時代の専攻が機械学習・データ解析であったため、ユーザーローカルのビジネスモデルには大きな興味があり、売上の推移とビジネスモデルを纏めた。
売上・利益・時価総額の推移
まずは売上・利益・時価総額の推移を簡単にグラフにした。
外部資本は「YJキャピタル」「East Ventures」「合同会社クリムゾングループ*2」の3社が入っている。YJキャピタルとEast Venturesが2015年6月期にPOSTバリュエーション3,412,500(千円)で262,500(千円)出資し、YJキャピタルとEast Venturesと合同会社クリムゾングループが2016年7月期にPOSTバリュエーション4,437,030(千円)で212,030(千円)出資している。なお、2014年6月期(第9期)目までは特に自己資本のみで経営していた模様。
ビジネスモデルの整理
現状の主力ビジネスモデルは「データ解析ダッシュボード」のB2B向けSaaS提供である。ダッシュボードは「User Insight」「Social Insight」「Media Insight」の3つを提供しており、順に「サイト分析」「SNS分析」「記事分析」が主軸であるよう。
また、「User Insight」に関してはYahoo社とNifty社にOEM提供しており、順に「Yahoo!アクセス解析」「ココログアクセス解析」という名でエンドユーザーに提供されている。Yahoo!アクセス解析では、Yahoo!の広告主向けのアクセス・広告効果解析ツールとして提供されており、ココログアクセス解析では、ココログ(@nifityのブログサイト)利用者向けのアクセス解析ツールの提供を行っている。
ビジネスモデルは、解析ダッシュボードの利用料を企業から徴収するモデル。OEM提供しているYahoo社とNifty社に関しては、エンドユーザー(広告主・ブログ主)に対しては無料でこのサービスを提供している。
現状の主要取引先はYahoo!JAPAN社となっており、2016年6月期で143,322(千円)の売上(全体の18.3%)とのこと。徐々に他社への販売高を拡大することで、割合を落としていくと述べられており、実際に2017年第2四半期実績では10.3%まで落ちている。Yahoo!JAPANの広告主になれば、(課金しなくても)無料でアクセス解析実施できると述べられており、*3ユーザーローカルにとっては売上が立ちやすい形でサービスをOEM提供できているかもししれない。
現在もチャットボット分野などの新規事業にも注力しており、今後は機械学習・AIを軸に幅広く事業を展開する模様。
競合他社との比較
ユーザーローカルの業績をビッグデータ解析系の上場したベンチャー企業と比較した。
ユーザーローカルが他3社と比べ、経常利益・時価総額ともに高い結果となった。これはユーザーローカルの従業員数が28名(臨時雇用含まず)と限定されていることからも、利益率の高い製品を生み出せていることが見て取れる。