有名企業の有価証券報告書をざっと概観してみた
はじめに
有名企業12社の2016年度有価証券報告書(以下有報)を読んでざっと内容を概観した。
まずは有名成長中企業として興味があった「RIZAP GROUP」「リクルート」「船井総研」の3企業を。また、メディア系企業として興味があった「Gunosy」「ぐるなび」「Yahoo!Japan」「じげん」「価格コム」を。最後に、2〜3年以内にマザーズ上場した新進気鋭データ解析系ベンチャーとして興味があった「ユーザーローカル」「タブルスタンダード」「データセクション」「ブレインパッド」「エルテス」を選択した。
それぞれの企業に対して、売上・経常利益・従業員数・PER・経常利益率・従業員一人あたりの売上、従業員一人あたりの経常利益を纏めた。
2016年度の12社の有報の比較
比較した表を以下に示した。
まずは「成長コングロマリット系」のジャンルを考察する。PERを見ると、RIZAPが一番高い。つい2〜3年前までRIZAPのPERは5倍前後であった*1ので、値が急上昇している。この数年でRIZAPの市場からの評価が「イロモノ」から「結果にコミットとする会社」と変化したことが見て取れる。
また、船井総研の経常利益率の高い。船井総研は不動産、アミューズメント、飲食、教育などオールジャンルを手がける中小企業向けのコンサルティングファームであるが、経常利益率23.53%を記録していた。NRIを始めとするコンサルティングファームと比較*2しても利益率の高さが目立っている。
「メディア系」のジャンルでは、Yahoo!Japanと価格コムの収益性が圧倒的であった。両者ともに従業員一人あたりの売上が56-59百万円、経常利益率が47-50%を叩き出している。
PERの比較では、ぐるなびと価格コムが殆ど変わらないのが注目であろう。「食べログ」と「ぐるなび」の有報の比較では、「食べログ」のほうが収益性が高いモデルであることが明らかであるのに、PERに目立った変化はない。価格コムが過小評価、もしくはぐるなびが過大評価されている可能性がある。
「新進気鋭データ解析系」のジャンルでは、以前も調査したユーザーローカルの利益率が高いのが目につく。データセクション・ブレインパッド・エルテスでは、データ解析に紐づくコンサルティングを実施しており、ビジネスモデルに属人的な要素が含まれると利益率を下げていることが見て取れる。
関係性を分析してみる
折角これらの数字をエクセルにしたので、相関のある関係を見てみたい。(12社という限定されている中ではあるが。)今回は「経常利益率」と「従業員一人あたりの経常利益」を比較した。比較結果は以下の通り。
相関係数が83.06%と、従業員一人あたりの経常利益と経常利益率には強い正の相関関係がある。*3一人あたりの経常利益が10,000千円を目指す企業であれば、経常利益率が30%以上になるようなビジネスモデルにする必要があることが見て取れる。
株式会社ユーザーローカルの有価証券報告書を分析してみた
はじめに
2017年3月30日(木)に新規上場した(株)ユーザーローカルの有価証券報告書を分析した。公募2,940円に対して初値12,500円と初値騰落率439%となり、今話題のビッグデータ解析・人工知能銘柄とあって、かなり市場から注目されていたことが伺える。
私自身、学部時代の専攻が機械学習・データ解析であったため、ユーザーローカルのビジネスモデルには大きな興味があり、売上の推移とビジネスモデルを纏めた。
売上・利益・時価総額の推移
まずは売上・利益・時価総額の推移を簡単にグラフにした。
外部資本は「YJキャピタル」「East Ventures」「合同会社クリムゾングループ*2」の3社が入っている。YJキャピタルとEast Venturesが2015年6月期にPOSTバリュエーション3,412,500(千円)で262,500(千円)出資し、YJキャピタルとEast Venturesと合同会社クリムゾングループが2016年7月期にPOSTバリュエーション4,437,030(千円)で212,030(千円)出資している。なお、2014年6月期(第9期)目までは特に自己資本のみで経営していた模様。
ビジネスモデルの整理
現状の主力ビジネスモデルは「データ解析ダッシュボード」のB2B向けSaaS提供である。ダッシュボードは「User Insight」「Social Insight」「Media Insight」の3つを提供しており、順に「サイト分析」「SNS分析」「記事分析」が主軸であるよう。
また、「User Insight」に関してはYahoo社とNifty社にOEM提供しており、順に「Yahoo!アクセス解析」「ココログアクセス解析」という名でエンドユーザーに提供されている。Yahoo!アクセス解析では、Yahoo!の広告主向けのアクセス・広告効果解析ツールとして提供されており、ココログアクセス解析では、ココログ(@nifityのブログサイト)利用者向けのアクセス解析ツールの提供を行っている。
ビジネスモデルは、解析ダッシュボードの利用料を企業から徴収するモデル。OEM提供しているYahoo社とNifty社に関しては、エンドユーザー(広告主・ブログ主)に対しては無料でこのサービスを提供している。
現状の主要取引先はYahoo!JAPAN社となっており、2016年6月期で143,322(千円)の売上(全体の18.3%)とのこと。徐々に他社への販売高を拡大することで、割合を落としていくと述べられており、実際に2017年第2四半期実績では10.3%まで落ちている。Yahoo!JAPANの広告主になれば、(課金しなくても)無料でアクセス解析実施できると述べられており、*3ユーザーローカルにとっては売上が立ちやすい形でサービスをOEM提供できているかもししれない。
現在もチャットボット分野などの新規事業にも注力しており、今後は機械学習・AIを軸に幅広く事業を展開する模様。
競合他社との比較
ユーザーローカルの業績をビッグデータ解析系の上場したベンチャー企業と比較した。
ユーザーローカルが他3社と比べ、経常利益・時価総額ともに高い結果となった。これはユーザーローカルの従業員数が28名(臨時雇用含まず)と限定されていることからも、利益率の高い製品を生み出せていることが見て取れる。